政治に殺された男

【ミニチャンプス マクラーレンMCL32 S.バンドーン 2017】
ハミルトンに並ぶ逸材の育成ドライバーとして、大物ルーキーのデビューだとマクラーレンから大々的に宣伝されたバンドーン。しかしそのキャリアは当時のチームの混乱によって儚くも散ってしまうのでした。

2016年にアロンソの代役でスポット参戦して入賞すると、バンドーンは期待の大物ルーキーとして一躍注目の的になりました。
マグヌッセンを亡き者にしてまでフェルスタッペン並みの逸材と大々的に宣伝された彼でしたが、悲しいかなデビューマシンが歴史的失敗作の「MCL32」となってしまいセンセーショナルなフル参戦デビューとはなりませんでした。

わずか3度のポイント獲得が彼の初年度の戦績で、2度の7位フィニッシュがベストリザルトとなりました。その期待値を思えば失望の一年でしたが、翌年の更なる低迷とその後の首脳陣の交代、そして後ろ盾を失ってのシート喪失が待ち構えている彼にとっては、悲しいかなこの7位がキャリアのベストリザルトとなっています。

彼のデビュープロモーションの一環として、アマゾンプライムでデビューに密着した「グランプリ・ドライバー」という番組が制作されました。第1話は彼のF1準備に密着したドキュメンタリーだったのですが、その後のチームの成績不振を経て番組は大幅に方針変更。
マクラーレンとホンダの決別がクライマックスに据えられ、バンドーンのキャリアはすっかり構成外となってしまいました。あまりに不憫ですね……。

2017-18年というマクラーレン暗黒期でキャリアを終えてしまったバンドーン。17年のホンダとの決別、18年の体制変更は粛清ともいえる大改革でドライバーも含めて新体制への変革を余儀なくされました。
実績あるアロンソは引退という花道が用意されましたが、まだ2年目のバンドーンはその実力を披露する機会も得られぬままあっけなくF1のキャリアを終えてしまいます。彼は間違いなくマクラーレンの政治にキャリアを潰された被害者でした。
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