ケータハム CT05 小林可夢偉

ケータハム・ロータス2014

残るはマシンの資料価値のみ

【スパーク  ケータハムCT05  小林可夢偉 オーストラリアGP】
小林可夢偉のF1最後のシーズンとなった2014年。彼の走りよりも、チームのドタバタ劇が思い出されます。マシントラブルもひどく、開幕戦オーストラリアGPではブレーキトラブルから1コーナーで追突リタイア。悲しみのシーズンの始まりです。

前半戦こそチームの総力を彼に注げばライバル・マルシャには勝てそうだったケータハムですが、チームはエリクソンらチームメイトのペイドライバーたちへのアップデートを優先しました。結果彼らの「お下がり」で戦うことになった可夢偉選手は後半戦以降、旧型かつ品質劣化でまともに走らないマシンで戦うことを強いられます。

チームメイトが壊したパーツのリペアで走る、当然壊れてリタイアする、それだとまたお金がかかるから壊れる前にリタイアするなんていう見ていられない惨状が当たり前のように続きましたよね。この年は彼がどれだけひどい境遇で戦っているかを伝えるニュースで溢れていた記憶があります。肝心の母国日本GPでも、新型パーツを試すチームメイトの傍ら壊れることがほぼ確実な旧型部品で走るなんてことに……。

エアバスやGEなどスポンサーだけは一流企業群だったケータハム。参戦当時からスポンサーは豪華でしたが、実態は立ち上げにかかった費用の前借分をロゴ掲載で払っているなんて噂を雑誌で読んだ気がします。日本GPに向けては「Mai」さんなる個人スポンサーが現れて少し話題になりましたね。

いかにノーズ下に空気を流すかがこの年のトレンドでしたが、このゲテモノノーズはただ空気を流せばいいというわけではないことを見せてくれました。あまりにも信じられない形で、オフテスト序盤では「もしかしたらこれが正解かも?」なんて思ったものです。いや、結果はノーズどうこう以前の問題だったのですが。

唯一と言っていい見せ場は中国GPでのビアンキへのオーバーテイクでしたが、これはチェッカーのタイミングを誤った運営の不手際で無効になります。モナコGPでは入賞のチャンスがあったもののビアンキからの追突で叶わず。それでも後がない可夢偉選手とこれからの彼だったので、ビアンキの成長の糧になればこの年の参戦も少しは意義あるものになるかなと思っていました。しかし、そのビアンキも事故によって亡くなっています。

当時日本はF1放送の契約延長問題もあり、日本人がグリッドにいることは日本のF1文化にプラスの影響をもたらしたのかもしれません。しかしまともに走ることも、当然活躍することもできず、競ったライバルも失われた今となっては、可夢偉選手の2014年シーズンに大きな意味を見出すことは難しいですね……。

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