チャンピオンの背中に佐藤琢磨

【ミニチャンプス スーパーアグリSA07 佐藤琢磨 2007】
スーパーアグリがチーム史上唯一の入賞を果たした2007年。カナダGPは一生色あせない、日本人の誇りのようなレースでした。

デビューイヤーの2006年はマシン開発に苦しんだものの、この2007年はホンダと共同開発し第三期唯一の優勝を飾った「RA106」に酷似したこの「SA07」での参戦が認められ、中団で入賞を目指し戦うチームへと躍進しました。しかしこの騒動でカスタマーシャシーが以後明確に禁止となったことで、結果的にチームの首を絞めてしまう劇薬のような一台となっています……。

そんな未来は露知らず、開幕戦オーストラリアGPでチーム史上初にして唯一のQ3進出を果たし希望あるスタートとなります。第4戦スペインGPではルノーのフィジケラの給油ミスのおかげで8位完走、チームとして初のポイントを獲得すると、第6戦カナダGPでは荒れたレースを生き残り6位フィニッシュ。スーパーアグリの思い出は全てこの期間にあったと言ってもいいほどの躍進ぶりでした。

そんな日本のF1史に1ページを刻んだこの「SA07」。注意深い読者の方はお気づきかもしれませんが、このミニカーはショーカーで本戦仕様ではありません。あえて本戦仕様の台紙にショーカーを乗せてコレクションしています。本戦仕様だとスポンサーロゴが違うんですよこのマシン。
サイドポッドに「SSユナイテッド」という香港の石油会社をスポンサーを掲げてシーズンを戦ったのですが、この会社の未払い問題によってチームは資金繰りに致命傷を負いました。加えてこの架空とも言われたこの会社を紹介した日本の証券会社は裁判までしてしっかり紹介料を約17億円も奪っていく始末。今でこそコンプライアンス・ガバナンスが叫ばれますが、20年前のスーパーアグリは日本のチームでありながら日本の会社からかなり食い物にされていたことを忘れないようにしたいです。

そんなわけで、このマシンには少し複雑な思いがあります。日本人からみてもグレーなカスタマーシャシーだったので前年自社製「SA06」で戦った時ほどの感動はなく、それでいてスポンサー問題の闇も気分を悪くします。(類似の問題は2019年ハースのリッチエナジー未払い事件まで12年間も発生しない、レアケースなのです……)
ただ、深夜のカナダGPの中継を眠い目を擦って見続け、荒れたレースを琢磨がしぶとく生き残り、ラスト数周で最速マシンのマクラーレン・アロンソを抜き去る雄姿は一生ものの感動だったと思います。「日本の力だけでここまでF1に太刀打ちできるんだ!」という感動はこれが最初で最後かなぁ……。
このアロンソへの追い抜きが王座決定に影響を及ぼすとは思いもしなかったあのバックストレート。彼を現在まで走らせる一因がスーパーアグリだと思うと感慨深い。
コメント