セナのデビューマシン
【デアゴ トールマンTG184 A.セナ 1984】
1984年にセナがF1にデビューした年のマシンです。開幕数戦はこのTG184ではなく旧車でエントリーしていたので厳密にデビューマシンというわけではないですが、ほぼ同じようなものでしょう。成績やドライバーなどを基準に有名どころを押さえているこのシリーズですが、デビューマシンがラインナップされているのはセナとシューマッハしかありません。 成績を抜きにして、抑えておくべきF1史に残るマシンですね。
1981年にデビューしたトールマンですが、F2チームから昇格した彼らはマシンもF2ベースのもので、最初の2年はまともな成績を残せませんでした。しかしシューマッハのフェラーリ黄金期を支えたデザイナー、ロリー・バーンによって設計されたTG183Bは競争力を持ち、1883年の終盤には表彰台まであと一歩となる活躍を見せます。
そんな上昇ムードの中セナが1984年にデビューすると、モナコGPではこのTG184でチーム初となる表彰台を獲得します。雨の中ペースの上がらないプロストを新人セナが猛追し、追いつくかどうかが注目を集めましたが、視界不良で危険を訴えたプロストの抗議によってレースが打ち切りとなりました。結果2位に終わったセナは不満を持ちますが、中断によるハーフポイントが影響しプロストもラウダとのタイトル争いに敗れるなど、両者の今後の対立を示唆するかのようなレースとなりました。
このモナコGPを含め3度の表彰台を獲得したTG184はチームの唯一の成功マシンといえます。いずれもセナによってもたらされた結果で、この成績が認められたセナは強豪ロータスへの移籍を果たします。一方セナを失ったチームは翌年ポイント獲得することすらできませんでした。F1において正しい時に正しいポジションにいるというのは非常に重要なことで、1984年にこのチームからデビューしたことはまさに正しい選択だったことでしょう。トールマンの成績を見ると、デビューが前後していたらセナの最終成績は大きく変わっていたかもしれません。
が、そういう歴史的背景を除いて見るとこのマシンのルックスはとても酷いですよね。洗練された自動車レースのトップカテゴリーとはちょっと思えませんよねぇ…。
移籍したセナは語る必要すらない存在となっていくわけですが、彼を失ったチームもただ消失したわけではありません。1985年はタイヤの供給が受けられず序盤戦に出走できない体たらくでしたが、1986年にはベネトンに買収されベネトン・フォーミュラとして今日のルノーに至る名門チームとなっていきます。トールマンはF2出身の小さなチームでしたが、ドライバー・コンストラクター両方の観点から偉大な始祖として歴史に名を残すことになりました。
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