フェラーリ 312T5 G.ヴィルヌーブ ブラジルGP

フェラーリ1980

史上最悪の低迷

【ブルム フェラーリ312T5 G.ヴィルヌーブ ブラジルGP 1980】

前年ダブルタイトルを獲得したフェラーリは翌1980年、今日までのチーム史上ワースト成績となる大不振を期します。遅いマシンをジルが限界まで攻める、そのコントラストがファンを惹きつけたシーズンです。

グラウンド・エフェクトカー全盛期となっていた1980年、V型ではなく水平対向の幅広いエンジン形状を採用していたフェラーリはマシン設計に制限があり、他チームに対して深刻なダウンフォース不足が露呈しました。前年のチャンピオンチームは表彰台にすら登れない、チーム史上ワーストとなるコンストラクターズ10位という成績を残します。

前年王者のシェクターはこの状況に嫌気が指し早々に引退を表明、フル参戦3年目のジルはあっという間にフェラーリのエースに昇格しました。開幕2戦目のブラジルGPではスタート直後に首位に立ちながらもずるずる後退し、最終的には16位フィニッシュ。シーズン序盤から深刻な競争力不足が露呈していましたが、ジルの闘志は決して消えることはありませんでした。

今日まで残るフェラーリ史上最低成績のマシン、312T5。1975年のデビューから6年目を迎えた312Tシリーズはいよいよ限界を迎え、シーズンを通して両ドライバー合計の入賞回数はわずか5回、最高位5位という歴史に残る低迷を見せます。

歴史的不振に陥ったフェラーリでしたが、ジルは決して戦いを諦めませんでした。勝利ではなく常に前を目指して戦う彼曰く、10位争いでも楽しめる、どんな状況でも常にベストを尽くすのがレーシングドライバーだとのこと。良い記録が一つも残らないこのシーズンでしたが、駄馬を駆り限界を攻めるジルの走りはティフォシを熱狂させ、彼の人気を一段と高めたシーズンです。

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