悲しき初勝利
【ルックスマート フェラーリSF90 C.ルクレール ベルギーGP】
デビュー2年目にしてフェラーリに大抜擢されたルクレールの初優勝マシン。祝福の勝利になるはずですが、決勝前日のF2での友人ユベールの死によって素直に喜べないものとなってしまいました。この年のルクレールはデビュー2年目ながら様々な面を見せてくれましたね。
開幕前の大方の予想はベッテルが、エースでルクレールは当面セカンドとしてトップチームに慣れることが仕事だと思われていました。チームも開幕戦前にベッテル優遇を明言していましたが、レースではベッテルの後ろで「彼より速く走れるけどついて行けばいいんだよね?」と無線で強気を見せます。
大物の器を見せたルクレールは次ぐバーレーンGPでF1 999戦目にして99人目のポールシッターという記録を樹立。レースの大半を支配するも初優勝目前の終盤にまさかのエンジントラブルで3位に転落してしまいましたが、優勝したハミルトンはもちろん観ている誰もが次の初優勝は彼だと確信したレースだったと思います。
以降はずるずると失速するフェラーリにフラストレーションを感じてか、前半戦は荒い面も目立つようになっていきました。特に母国モナコGPではチームの予選でのミスによる後方スタートを挽回しようと荒い抜き方を連発し、結果クラッシュからのパンクでレースを台無しにしてしまいます。主催者は彼のポールを期待してか予選後のTOP3写真撮影のバックにルクレールの顔写真が大きく映っていましたが、そこに本人が居なかったのが印象に残っています。F1ってこういうことすると上手くいかないんですよねー。
後半戦は疑惑のエンジンマジックがありベルギーGPでポールトゥウィンを飾りますが、ユベールの死もあって無線でも喜びをあまり見せることはなくマシンを降りて天を指さす姿が印象的でした。本当に彼に捧げる勝利という光景でしたね。続くイタリアモンツァでも連勝し、この時はティフォシの前で喜びを爆発、ファンからの声援もありよい祝福となったことでしょう。
と、ここまではヒーロー誕生物語のように順調だった彼ですが、その後はチーム内のパワーバランスを巡ってベッテルと対立を繰り広げチームの成績に大きな影響を及ぼすまでになっています。最後はブラジルGPでの同士討ちでシーズンを終え、この火種は未だ燻っているように見えますね。ベッテルを敬う声はそのまま彼への批判になりつつありますが、優等生な姿で駆け上がってきた人がタイトル争いのプレッシャーの前にどう変化するかを見せてくれて初めて面白くなるものです。デビュー年のハミルトンより翌年以降の方が話題に富んでいたように、これからのルクレールがどんな態度を示すのか楽しみですね。どうあったって間違いなくF1を背負って立つ一人ですから。
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