可能性の感じる取り組みでした
歴史的な1日となったF1のスプリント予選。賛否両論、特に日本では否定的な意見が多いようですが、個人的にはとても面白く、続けていくべき価値のあるポテンシャルを秘めたフォーマットだと感じました。今回がもちろん100点ではなかったものの合格点の成果だったと思いますし、突き詰めれば金曜日の従来予選走行との記録の取り扱いの問題で、土曜日に得点を賭けてスプリントレースをすることはレースを見に来たファンにとってよい取り組みだと思います。
FIAも新規映像フォーマットを多々用意する気合の入れようで始まったスプリントレース。内容は日曜レースの第1スティントを切り抜いたような展開で、スタート直後にバトルがあって10周もすれば隊列が落ち着くというもので、日曜同様見る価値のある走行セッションだったと思います。終盤に4位以下のドライバーに攻めるインセンティブがないことは問題ですが、ファステストラップの権利を全車に付与するなどして対応できるのではないかなと思います。このスプリントによって最初のスティントが様子見できたことで日曜の決勝レースの第1スティントはおそらく退屈なものになると思いますが、それはパルクフェルメ規定を変えれば対応できる問題で、このスプリントレース自体の問題ではないと思うんですよね。
予選の価値が下がった、という声を耳にしますが、個人的には一方で年間タイトルの価値はスプリントの導入ではるかに向上すると思いました。Q1敗退リスクが年に1度あるかどうかのトップチームにおいては、予選がレース化されることはリスクの著しい向上でしかありません。高いハードルを越えて上位グリッドを、ひいてはスプリントポイントを獲得しなければタイトルにたどり着けないとなると、不確実性は従来の比ではないですからチームはより確実な仕事を求められますよね。今回のペレスのスピンは、まさにその難しさの象徴的なシーンだったと思います。それを乗り越えて手にする年間タイトルは従来よりもより難易度の高いものになるのではないでしょうか。
もちろん今回が導入初回のフォーマットですから粗削りのため問題点は挙げればきりがないですし、特にポールポジションの扱いは論争の対象ですよね。1周最速を指すのかグリッド1位を指すのか、従来は両方の意味を持っていましたが分裂した今となっては再考が必要で、個人的には現在のスプリント勝者がポールというよりは1周最速のドライバーこそがポールだと思うので、金曜予選の1位を記録上のポールとしてほしいなぁと思います。そしてそもそも曜日を分けずに、土曜は午前に従来予選をして午後にスプリントをする予選デーにするとか・・・。ですが結局これも取り扱いの問題で、土曜日にF1マシンのレース時間を作るという価値ある取り組みを覆すほどの大問題ではないと思います。
2021シーズンは今回を含めて3度のスプリントレースが計画されているF1。開催数は増やせないのに露出時間を増やしたいFIAの思惑もあり、また16年の予選方式変更のような絶対にこれは採用できないという致命的な失敗でもなかったので、来年度はもっと多くの試行がなされ数年後には完全にスプリントに置き換わっていてもおかしくないなと思うほど、可能性を秘めた取り組みだなと感じました。
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