暗記文句のように覚えている

【アシェット ホンダRA272 R.ギンザー メキシコGP 1965】
ホンダがF1で初めて優勝を挙げた伝説的なマシン。ちょっとこのスポーツをかじった人なら「1965年メキシコGP RA272 R.ギンザーによるホンダ第一期初優勝」って暗記文句のように覚えていますよね。

第1期ホンダのF1参戦は1964年8月のドイツGPからでした。当時60年代のF1は有力なプライベーターチームがいかに強力なエンジンを手にすることができるかが勝負のカギを握っていましたが、そんな中でロータスが極東のエンジンサプライヤー・ホンダに目をつけて接触。結局ホンダエンジンの搭載は見送られたものの、これを契機にホンダはシャシー開発を含めたフル参戦に挑みます。

その後1968年まで参戦を続けたホンダ。特に1967年に64年王者サーティスが加入したことは大きく、この年はコンストラクターズ4位を記録。これが第1期活動のベストリザルトとなりました。終わってみれば2勝2位1回3位2回という成績で傑出したワークスチームとまではいかなかったものの、日本のF1史が大きな一歩を踏み出す、まさに歴史を築く挑戦となりました。

車体へのスポンサーが解禁前でナショナルカラーの採用が厳密に求められていた時代、ホンダは日本を代表してアイボリーホワイトの車体に日の丸を描いて挑みました。この「RA272」は動態保存されたびたびデモランに登場するほか展示されることも多いので、F1ファンであれば出会う機会の多いマシンですよね。今度の4月のデモランでも再び走るそうですが、4/2のイベントって社会人はまず参加できないので若い人はぜひ楽しんでください……。

ホンダに続く日本勢のF1での活躍は1976年のF1・イン・ジャパンまで待つことになります。しかしF1が国際拡大路線を歩んだ一環として日本で開催された76年とは異なり、まだまだ未知の世界だったF1に挑んだ第1期の挑戦は月並みですがフロンティアスピリットがとにかく素晴らしい。その後ホンダは出入りを繰り返すわけですが、この経緯を思えば継続よりも「開拓」に意義を見出す文化であっても納得できるような気もします。これもまた月並みな感想ですが。
ゴールドのカラーリングで参戦という当初の希望が叶わず日の丸カラーになったRA272ですが、50年以上経過して復刻されてもアイコニックな存在感を放つ秀逸なデザインとなりました。1964年の当時に日の丸を描いた人はここまで愛されるとは思わなかったことでしょう……。
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