ザウバー C29 小林可夢偉 SUZUKA LEGEND

ザウバー2010

ヘアピンの伝説

【スパーク 鈴鹿LEGEND ザウバーC29 小林可夢偉 日本GP 2010】

小林可夢偉初の母国凱旋レースとなった2010年の日本GP。歴史に残るオーバーテイクの連発で、日本のファンにその才能を如何なく見せつけた一戦となりました。

予選14位からのスタートとなったこのレース。その予選Q2ではS2まで10位より速いタイムを記録し、Q3進出目前というところで最終シケインでわずかにミスが出てしまいました。この展開は前年の中嶋一貴がQ1突破目前にS3で失速した経験を思い出させ、「やはり日本人は鈴鹿でダメなのか……」と不安になった覚えがあります。

ところが決勝レース、硬いプライムタイヤスタート(もはや死語ですね)を選択しリバースストラテジーを取った可夢偉選手はオープニングラップの混乱を潜り抜けスルスルと上位に浮上し、最後にはオプションタイヤの優位を武器に圧巻のオーバーテイクショーを披露してくれるのでした。

不利なプライムスタートながらオプションを履くライバルのトロロッソ・フォースインディアらをヘアピンで料理し、6位まで順位を上げた可夢偉選手。当時のザウバーの頼りない戦略によって無駄にスティントを伸ばしてしまった結果タイヤ交換を終えると再び彼らの後ろに戻ってしまうのですが、オプションタイヤのペースを武器に再びヘアピンでオーバーテイクを連発して最終的に7位完走という大金星を挙げたレースとなりました。

鈴鹿LEGENDモデルとして、スパークでは通常品とは異なりサイドポッドがダメージ仕様となりました。ミニチャンプスの通常品も同様にダメージ仕様なのですが、こちらのモデルはレース後の手を振った特別仕様となっています。当時はお金がなくてミニチャンプスしか買えなかったのですが、大人になって余裕ができたことで鈴鹿LEGENDもしっかり収集しました。これが本当の大人買いってやつですね。

トロロッソのアルグエルスアリをアウトから抜いた際に二度も接触したことで垂直フィンを破損した可夢偉選手のC29。このダメージがこのレースの戦いの過酷さを示すいい勲章のように光るんですよねぇ……。この年のトレンドだったFダクトを最初期に導入したチームながら最高速でライバルに太刀打ちできず苦戦が予想された日本GPでしたが、そのトップスピードを必要としないヘアピンでインにアウトに、縦横無尽の追い上げを見せてくれました。

そしてこの経験が2012年にピットアウト直後で追い抜きしなきゃいけない場面で役に立って表彰台に繋がる伏線となっていたのもまた素晴らしいんですよねぇ。

入賞争いすら難しいマシンだったC29の改善と共に、タイヤマネジメント・オーバーテイクのスキルが著しく向上した可夢偉選手のこの年の集大成ともいえるレースとなった日本GP。

フル参戦1年目のルーキーがライバルの多い中堅マシンで母国レースを入賞する、というだけでも十分立派なのですが、「リバースストラテジーを決めた」「必要なオーバーテイクもしっかり決めた」「そのオーバーテイクは予想外のポイントで決めた」というおまけ要素山盛りだったこの一戦。著名な英Autosports誌は小林可夢偉にこのレース唯一の満点をつけていて、この時代にドライバーオブザデイがあれば間違いなく受賞は彼だったことでしょう。

日本人が最初に挑んだ鈴鹿でこれだけの大活躍を見せてくれた2010年。今振り返っても、この当時はその先の未来に本当に希望しかなかったと思い返せるような、そんな素晴らしい一戦でした。

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