アストンマーティン AMR22 S.ベッテル アブダビGP

アストンマーティン2022

終幕

【ミニチャンプス アストンマーティンAMR22 S.ベッテル アブダビGP 2022】

2006年のトルコGPフリー走行でトップタイムを記録し鮮烈なF1デビューを飾ったベッテル。その後当時の数々の最年少記録を更新してきましたが、ついに引退、ラストレースを迎えました。ベッテルへの思い出を振り返りましょう。

私は2006年からF1を観始めたので、最初に出会った超大物ルーキーはハミルトンとベッテルの二人です。ハミルトンは未だ現役ですから、私にとっての「大物新人のデビューから引退まで」を見届けた最初のドライバーはベッテルになります。長年F1を観てきた人たちが語る「あの人はすごかったんだよ」という言葉が、ああこういう感じなんだろうなぁちょっとだけわかるような、そして寂しさがあるような、そんな感じの気分になりますね。

個人的には07年-10年の初期のベッテルが本当に好きで、「こんな新しくF1を観始めた今からでも歴史が変わる瞬間を見ることができるんだ」と本当に感動しました。そしてその後11-13年の4連覇時代はアロンソファンだったので、あの強さ・速さが本当に憎たらしかったですね。そしてそんな彼が新人リカルドに一方的にやられた2014年はなぜか悲しかったし、翌15年のフェラーリ復活優勝でまた彼が好きになりました。

その後のフェラーリ時代は結果が出ませんでしたが、これは本当に時代が悪かったですよね。同郷ドイツのメルセデスが最強PUで常に有利でしたし、フェラーリはPUのキャッチアップに加えてシャシーとオペレーションの改善(更には長年タイトルと無縁のプレッシャーへの対処まで)とやること盛沢山でした。

そのプレッシャーに飲み込まれるように、王座が近づいた2018年にはベッテル自身のミスも非常に目立つようになりました。その後最年少4連覇王者ながらチームを追放されるという屈辱の2020年のチーム低迷時には、彼のキャラクターであるユーモアを言う様がチームに怒られる映像まで出回るような状態で、本当にただただ辛い時間でした。新天地のアストンマーティンでは初年度の好調ぶりが翌年に続かず、そんな状況下で苦戦が長引く彼を見ていると引退表明も自然に受け入れられるような状態となっていましたね。

引退レースとなったアブダビGPでも当然スペシャルヘルメットを着用します。様変わりするヘルメットデザインという斬新さ、お得意の人差し指を突き上げたイチバンポーズ、そしてマシンに名前をつけたり靴下にコインを忍ばせてゲンを担ぐなんてルーティーンまで、非常に個性的なドライバーでしたねぇ。

最終戦となったアブダビGPではスタート前に全ドライバーから送別されたり、かつて死闘を繰り広げたアロンソから「アタックしないから前を攻めろ」と共闘するなど2010年代を見ているものにはとても感動的なラストレースとなりました。結果10位完走はちょっと物足りないような、でも引退レースで入賞するのはさすがと思えるような。

彼を知らない新たなファンからすれば、成績や結果を見て「早熟だった」と安易に判断されてしまいそうですが、そうはならないであってほしいなと思います。キャリア初期に成し遂げたことが歴史的偉業というだけで、その後フェラーリ時代にメルセデスに真っ向勝負に挑んだ姿には記録に残らない雄姿があったと思うんですよね。

というか、リーマンショック不況に逆行してメルセデスがF1参入した2010年は「将来的なベッテル獲得狙いか!」なんて噂されたのに、そのメルセデスが彼のキャリアを潰してしまうなんて全く予見できない未来でしたねぇ……。

ベッテルのキャリア全てを通して好きな1台を選ぶなら私はこのRB6かなと思います。決して最速マシンではなくトラブルも頻発、ポイントリーダーに一度もならないまま最後の最後に勝って戴冠というのは、最年少記録を塗り替え続けてきた彼の頂点として相応しいチャンピオン獲得劇だったと思います。お疲れさまでした。

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