トロロッソ STR3 S.ベッテル イタリアGP

アルファタウリ・トロロッソ2008

奇跡の初優勝

【ミニチャンプス トロロッソSTR3 S.ベッテル イタリアGP 2008】

歴史に残る偉業となったトロロッソでのベッテルの初優勝。奇跡、と一言で片づけるには惜しいほどの、数々のドラマがこの勝利には詰まっていました。

当時の最年少優勝・フェラーリカスタマーエンジン搭載車の初優勝・前身ミナルディを含めてトロロッソチームの初優勝と、どれか一つを取っても歴史に残る勝利を一人でまとめて成し遂げたベッテル。当時は珍しい大雨の週末となったモンツァでポールトゥウィンの完勝と、誰もが予想だにしない結末で歴史に残るレースの一つではないでしょうか。

イタリアGPを迎えるまで既にベッテルは雨のレースで好成績を残していましたが、土曜日に最年少ポールを獲得した時点でもライバル勢は「搭載燃料が軽いはず」と相手にしていませんでした。確かにあまりに雨がひどい予選だったので、参考にならないと考えた他チームを責めることはできないでしょう。ですが大雨のリスクを嫌って週末の走行を減らした他チームに対しフリー走行から距離を重ねたベッテルのレースペースは本物で、ウサギとカメの話のようにベッテルが着々とレースをリードし、世界中が徐々にその勝利の可能性に気づいていくのでした。当時は本当にドキドキしましたねー。

このドイツ人の歴史的快挙をドイツのメーカーミニチャンプスが見逃すはずもなく、イタリアGP仕様のミニカーも当然リリースされました。弱小トロロッソなのにバリエーション展開があるというだけでも贅沢なのですが、本家レッドブルRB4のリリースすらないのにこのSTR3イタリアGP仕様は1/18スケールまでリリースされました。以降ベッテルの1/18は毎年作られているので、レッドブルの1/18モデルカーシリーズはベッテルの昇格によってリリースが開始したと言っても過言ではないですね。

今でこそMV別注を筆頭に拘ったドライバーフィグが付いてくることも多いですが、当時はこのガッツポーズの変更があっただけでも「レア」な一台でしたね(てかガッツポーズってこれが初出だっけ?)。最新の加工ドライバーフィグと見比べると大したことないのですが、ベッテル以前で初優勝が特別モデル化されたバトンは腰に手を当てた謎のスタンディングフィギュアが付属しているだけだったので、この加工が当時どれだけ力を入れていたかがお分かりになりますでしょうか。

周りが彼のペースに気づいたときにはすでにセーフティーマージンを築いて勝利へ一直線だったベッテル。コース上でライバル勢に脅かされることなく初優勝を飾り、この年初優勝を挙げた3人でポディウムに登壇しました。最年少記録も「いずれ更新される」とあまり気にしない様がかっこよかったですね。

いつか勝つだろうと思っていた人が勝てば素直に「おめでとう」だし、勝てないと思っていた人や実力者だけどこのマシンでは無理だろうと思っていた人が勝てば「驚き」を楽しみつつ初優勝を祝福しますよね。でもこのベッテルや16年のフェルスタッペンの「近く勝つだろうと思っていたら突然勝って、気持ちの準備もないままいきなり時代を切り替えられた」衝撃はそうそうありません。20年間F1を観ていてもそんな歴史の転換点はこの2レースだけだったので、本当に偉大な勝利だったなと思います。

同じく急に時代が変わって驚いた2016年のスペインGP。ライブでのレース視聴はもちろん、それまでのメディアの論調やその後の世論の急速な変わりようを体験してこそ「リアルタイムで見た」と誇れますよね。レース数が増えてもこれがあるからライブ視聴を続けたい……。

コメント