トヨタ TF109 小林可夢偉 ブラジルGP

衝撃のF1デビュー戦

【ミニチャンプス　トヨタTF109　小林可夢偉　ブラジルGP　2009】

前戦で負傷したグロッグに代わりシーズン最後の2戦の出走が決まった小林可夢偉。デビュー戦となったブラジルGPではいきなりこの年のチャンピオン、バトンとのバトルを見せ周囲を驚かせます。

予選11位からのスタートとなったこのレース。トヨタはトゥルーリがオープニングラップで早々にクラッシュし、このレースでトヨタの命運は可夢偉1台に委ねられました。序盤搭載燃料を重めにスタートしながらもしっかりと後続を抑え続け、ピットストップのタイミング差で一時は3位を走行するなどこの年のトヨタの競争力に恥じない完璧なレース運びを見せます。

見どころはなんといってもその序盤でのブラウンGP・バトンとのバトルで、このレースで王座決定が懸かっていたポイントリーダーを18周に渡って抑え込みました。バトンが無線で「可夢偉がブレーキ中に動いて危ない」なんていう批判もしていましたが、そこはルーキーなのでご愛敬。むしろそんなルーキーがこの年のチャンピオンといきなり堂々バトルをするという対比が非常に注目を集め、可夢偉選手にとってはとても評価の高いデビュー戦となりました。

またレース半ばでは同じトヨタ育成出身のウイリアムズ・中嶋一貴とのバトルがあり、小林可夢偉がピット出口から出たところで二人が接触。一貴選手はフロントウイングにダメージを負いコントロールを失って激しくクラッシュしてしまいました。「なにも日本人同士でやり合わなくても……」とも思いましたが、手荒い引継ぎみたいで可夢偉選手のF1で生き残る熱意が感じられて非常に印象的なシーンとなりました。

序盤のバトンへの防戦だけでなく、レース終盤にはフェラーリのフィジケラに対して追い抜きを決めた小林可夢偉。残念ながら完走順位は9位と当時のルールでは入賞まであと一歩届きませんでしたが、「守れる・抜ける・作戦遂行できる」と三拍子揃った戦いぶりで私は彼のデビュー戦にしてすっかり心を奪われてしまいました。バトンとのバトルでは可夢偉選手のライン取りが危ないという意見もありましたが、それでも世間はチャンピオンと戦ったルーキーを評価する声の方が多かった記憶があります。

だって、その年のチャンピオンが決まる場面でそのポイントリーダーを抑え込むデビュー戦のルーキーが出てきただけもですごいのに、それが日本人だったんですよ？とってもすごくないですか？

新人がタイトル争いの結末に大影響、なんて場面は翌年のペトロフにも当てはまるのですが、この時のペトロフは1年間の成長の集大成を見せた場面だったのでデビュー初戦の可夢偉選手とはちょっと違うかも。中堅以降になるとタイトル争いに遠慮を見せるのに、生き残りに必死なルーキーはそんなのお構いなしって感じがF1らしくていいですよね。