名門の物量作戦
【ミニチャンプス マクラーレンMP4-24 L.ハミルトン 2009】
フェラーリ同様KERS導入に苦しんだ2009年のマクラーレン。オフシーズンのテストからすでにペース不足は明らかだったのですが、多大な開発で最終的にシーズン2勝を掴み取りました。
前年タイトルを争ったフェラーリ同様、空力変更とKERSに苦しむことになったマクラーレン。開幕前のテストから既に不調で、タイムが出ないことはもちろんKERSを付けたり外したり、空力規定が大きく変わったにも関わらず前後のウイングを新旧比較してみたり、プライドを捨てて問題を特定するために何でもやるという状態でした。他チームが2009年型マシンの周回数を重ねているのにマクラーレンだけ前後に2008年型のウイングを取り付けて走行中なんて状態だったので、「これはやばそうだ」と素人目にもわかるレベルでしたね。
問題はさらに続いて前年最年少チャンピオンに輝いたハミルトンの態度も悪化し、開幕戦ではSC中の追い抜きに関する調査で偽証を行ったことで失格処分に。チームがハミルトン保護のため担当エンジニア個人の責任だとして大ベテランエンジニアのデイブ・ライアンを解雇したことで、彼の王様待遇が非難される大事件となりました。マシン開発が進まない上にドライバーはトラブルを引き起こすというどうにもならない状態で、この後マクラーレンはよくトップランナーまで戻ってきたなと感心しますよね。
当時のマクラーレンの有り余る体力が目立つMP4-24のアップデート。オフテストの時点でダウンフォース不足が明らかだった前後ウイングの再設計はもちろん、フロアのアップデートからダブルディフューザーの開発、更にはホイールベースの変更まで行う大攻勢でした。これに加えて畑違いのKERSの継続開発を行っているので、一体どれほどのリソースを抱えていたんだという感じですよね。市販車部門のスピンオフを翌年に控えていたのによくここまでできたものです。この年にこれができていたのに、どうしてこの後低迷したんでしょうか……。やっぱり人の流出が大きいのかなぁ。
オフシーズンを挟んだとはいえタイトル獲得の翌戦で失格・チームスタッフを犠牲に幕引きを図ることになったハミルトン。シーズン中盤5戦連続無得点の低迷も開幕戦の件で腐るわけにもいかず、大規模アップデート投入後に迎えた得意なハンガリーGPではKERS搭載車として歴史的な初優勝を挙げます。その後もシンガポールGPでの優勝を含むシーズン5度の表彰台で、2強に次ぐランキング5位でシーズンを終えました。
若いチャンピオンの好き勝手を許していた翌年、同郷イギリス人の大人なチャンピオンがチームに加入しました。その後マクラーレンはバトンに傾倒、ハミルトンはメンタルを崩しマクラーレンを離脱するわけですが、2009年までのハミルトンの待遇を良く思わないチームスタッフがいると思えば納得の結末でもありますね。
コメント