走る凶器

【ミニチャンプス ロータスE22 P.マルドナード 2014】
伝説の「フォークノーズ」を搭載したロータス末期の迷車。マルドナードという荒いドライバーを乗せて印象深いクラッシュを見せてくれたものの、基本的には遅すぎてレースで映ることがあまりありませんでした。

資金難で開発の進まない車体に、最弱のルノーPUを載せたこのマシン。優秀なエンストンのメカニックをもってしても入賞わずか3回に終わりました。ノーポイントのザウバーとあわせ、コストが高騰しすぎて中堅チームが生き残れなくなったF1の構造問題を示したことが最大の成果でしょう。

メルセデス弱体化を狙った「FRICサスペンション」禁止の煽りも受け、手をそがれ足をそがれ、心臓は脆弱なトラブル体質という絶望的な状況でした。しかし暴力的なルックスをコース上で体現してくれたバーレーンGPでのグティエレス撃墜は忘れません。相手が宙を舞い一回転したあのシーンのおかげで、この車は永久にハイライトされることになりましたね。

資金難のロータスは手段を選ばず、マルドナードが持ち込む「PDVSA」とグロージャンを支援する「トタル」という競合オイルメーカーのロゴを堂々とマシンに掲載。細かなロゴが雑多に並んでいて苦しい懐事情が見えますが、すべて黒字にゴールドで描くだけで様になってしまうのがこのカラーリングのすごいところです。

ルールの穴を突くため工夫を凝らした左右非対称の「フォークノーズ」でしたがあまりに遅すぎて目立たず、ライバルの「アリクイノーズ」の醜さばかりが注目されました。そのためフォークノーズはヨーロッパRdに入った頃にはもう話題にも上がらなかった記憶。この姿で突撃してくるマルドナードは「まさに凶器」って感じで好きだったんですけどね。
またこのマシンは数十年ぶりにカーナンバー「13」をつけたマシンです。ベネズエラでは勇気を示す数字とのことですが、この年の成績を見ると不幸な番号には変わりなさそう……。

「ペイドライバーが増えすぎてドライバーの個性が薄くなっている!」というファンの不満に斜め上から答えを出してきたマルドナード。GPウィナーながらルーキーのようなクラッシュを繰り返し、壊した分も自分で賄う優秀な支払い能力が相まって現代F1でもかなり上位の個性派ドライバーでした。
残念ながら翌年はチームがルノーワークス化したことでお財布はお役御免に。その後のペイドライバーは金額規模も走りの安定感も彼を上回るのですが誰も優勝できてないんですよね。その荒っぽい走りも「もしかしたらまた成功に繋がるかも……」というギャンブル中毒的な期待が彼にはありました。
誰が何と言おうと彼は真っ向勝負でアロンソを破って勝利した優勝経験者です。彼の金字塔は今だ高くそびえ立っています。
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