三度目の正直
【レッドライン フェラーリF2007 K.ライコネン ブラジルGP 2007】
シューマッハの引退によって勢力図が激変した2007年のF1。ライコネンが後任としてフェラーリに移籍し、タイトルを連覇したアロンソがマクラーレンへと移籍。次世代を担うと言われた2人は新天地で戦いを始めます。
全17戦で争われた2007年シーズン、誰もがライコネンとアロンソの時代を予期しましたが、マクラーレンの秘蔵っ子、ハミルトンが非凡な才能を見せて序盤からタイトル争いに加わりました。シューマッハに師事したマッサも戦線に参列し、2チーム4台によるレベルの高いタイトル争いが繰り広げられます。
この年2チーム以外に勝利はなく、マッサが後半のトラブルで脱落するとタイトル候補は3人に絞られました。中盤以降はマクラーレンの速さが一歩優れていたものの、チームメイト間の不和によってポイントが分散。終盤にかけてはチームのバックアップを受けたハミルトンがタイトル争いをリードしましたが、中国GPのピットエントリーで痛恨のミスからリタイアすると、ラスト2戦を2連勝で締めくくったライコネンが17点差をひっくり返し、1点差でハミルトン・アロンソを破って初のタイトルを獲得しました。
開幕戦を勝利で飾り華々しいフェラーリデビューを飾ったライコネンですがその後序盤は大きく失速。モノコックにカナードを装着した後半戦仕様が登場してから中盤で一瞬息を吹き返すも、後半戦の大半をマクラーレンの後ろで過ごしました。この年はF1最大の産業スパイ事件、通称スパイゲートによって、フェラーリの設計機密がマクラーレンに流れていたのですから不利は当然かもしれません。情報を流出させたステップニーは謎の事故死を遂げ、受け取ったコフランもチームを追われるなど両チームはグリッド先頭で華々しく優勝を争う傍ら、裏では泥臭い戦いが繰り広げていました。
2003年、2005年に続き、3度目のタイトル挑戦でようやく戴冠を果たしたライコネン。今でもフェラーリ最後のチャンピオンとして手厚い待遇を受け、09年には一度チームを離れるも14年からは長くベッテル体制のキーパーソンとしてフェラーリで8年ものキャリアを過ごしました。
最後の大逆転で劇的なチャンピオン獲得ばかりが話題になりがちですが、その実シーズン中はあまりにもマクラーレンに後れを取っていたことから、シューマッハの後任として相応しくないと早期更迭論すら出ていたほどです。特に批判のピークはお膝元モンツァで宿敵マクラーレンに初の1-2を許したあたりで、日本GPの頃にはもうほとんどの人がこの年のタイトルを諦めていた気がします。今でこそベテランドライバーとしてグリッド中盤のお手本のような役割を見せるライコネンですが、もしこの大逆転がなければF1キャリアは早期に終わっていたかもしれませんね。
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