マクラーレン MP4-22 F.アロンソ

マクラーレン2007

敵はアロンソ

【ミニチャンプス マクラーレンMP4-22 F.アロンソ 2007】

皇帝シューマッハ時代を終わらせた当時の史上最年少王者として名門マクラーレン入りを果たしたアロンソ。格式あるトップチームの絶対エースとしてF1の新時代を担うと誰もが予想しましたが、待っていたのは壮絶な苦戦の道のりでした。

開幕戦をフェラーリに譲るも第2戦マレーシアGPでマクラーレンでの初勝利を挙げ、両雄並び立ち迎えたシーズン序盤戦。序盤の数戦は驚異の新人ハミルトンと表彰台を分け合い1-2フィニッシュを喜ぶ様が見られたのですが、第5戦モナコGPで1-2走行中にハミルトンからのアタックを受けたことで早々に関係に亀裂が生じます。実力があり将来有望であっても当面は自分のセカンドドライバーだと思っていたハミルトンがチームの支援を受けて自分に歯向かってくる、主導権を失うリスクを感じたアロンソの絶望感たるや想像もできませんね……。

その後ハミルトンがカナダGPで初優勝を挙げて迎えたアメリカGP、アロンソにとっては絶対に彼に流れを渡したくないレースでしたがサイドバイサイドの真っ向勝負に敗れ屈辱の2位に。チームイメージのために代表ロン・デニスの提案で肩を組んで仲良くポディウムに登壇したものの時既に遅く、関係は険悪なものとなり続くハンガリーGPの予選ではアロンソとチームとの「コミュニケーションミス」によりハミルトンの予選妨害が発生するなど、チーム内の雰囲気は悪化の一途を辿っていくのでした。

ボーダフォンをタイトルスポンサーに迎え、新チャンピオンとチーム秘蔵っ子の新人という豪華なラインナップで華々しい船出を迎えた新体制のマクラーレン。アロンソの母国スペインではデモランも含めたど派手なローンチイベントも開催されました。ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスはアロンソの政権になるかと思われたのですが、その座は新人に奪われプライドに傷を負い古巣ルノーに追い出される屈辱の憂き目にあいます。後の勢力図を思うとアロンソに注力していればここからダブルタイトルを何度も獲得できたと思うのですが、ハミルトンの存在に欲をかいてしまいましたね。

そんな悲しい経緯がありつつもMP4-22はアロンソが乗ったマシンの中でトップ3に入るかっこよさだと思っています。というか個人的F1マシンベスト3にも入りそう。ブリッジウイングがない初期モデルは至高のかっこよさで、今見ても近代的じゃない?

完全な内紛状態でチームの空気が最悪だった2007年のマクラーレン。アロンソは約束された自分への支援がないことでチームへの不満を露骨に発言し、デニスも愛弟子ハミルトンのデビューイヤーでのチャンピオン獲得という前人未踏の記録に色気を出して「タイトル争いの敵はアロンソ」と公言したことから、大事なシーズンの最終盤戦を文字通り孤立して戦うことになりました。結果は両者1点差でライコネンに敗れ大逆転を許し、アロンソもキャリアで唯一チームメイトにランキング順位で負けたシーズンとなったのですが、彼にとってはあの極限状態でハミルトンがタイトルを獲得しなかったことが何よりの安堵だったでしょうね。

歴史的名手アロンソが唯一敗れた(しかも同ポイントという極限の僅差で)相手ハミルトン、その後は数奇なもので互いに交互にタイトル争いしレースで交わることはほぼなかったのですが、2021年に久々の直接対決が見られました。F1で随一険悪な両者でしたが、最近は歳を重ねて関係性が雪解けしたのか互いをリスペクトする発言もちらほら見えますね。ベッテルやフェルスタッペンが台頭しても「俺たちが最強」みたいな発言しあうの、実際そうなんだけどちょっと微笑ましい。

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